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耕す・創る・歌う

 人里から7キロほど離れた山奥の谷間に暮らしている。隣人は、ない。ガス、水道もない。薪と沢水がある。家もなかった。金もなかった。根拠のない若い自身だけがあり、里で拾い集めた廃材で家を建てた。

 ただ、ずっと歌っていたかったからだ。

 草の生い茂った田畑を耕し米と野菜を育てた。金はなかったが家と食べ物を手に入れた。人里離れた山奥で幸運にも恋もし、子供が3人生まれた。

 小さな無数の一粒の種が実を生らす不思議、それを食べて生きている自分の存在の不思議を、沢の音、鳥たちの声、風に揺れる草木の歌だけに包まれる我が家の庭で、ふと想う。幸福な感覚だ。

 そんな瞬間に歌ができる。

 

 

 

瀬谷佑介(せやゆうすけ)~1976年 東京都日野市生まれ

 21歳の頃より新潟県上越市の山奥に在住。自分の家を作り、田畑を営み、音楽をつくり歌うことを生業としている。

 

 

「瀬谷佑介のブログ」⇒http://happy.ap.teacup.com/sayyah/

 

 

 

 

 

エッセイ「土と空の真ん中で」

            瀬谷佑介著           B4 90ページ 冊子

                              ¥1300

 

 拾い集めた廃材で家を建て、家族5人が腹いっぱい食べて行けるだけの米、野菜を育てることをライフワークに暮らす。沢から水を引き、料理、風呂、暖房に使う薪をつくり、雨の日には、その暮らしの中に生まれる音楽を楽しむ。毎日はそれだけで十分に忙しい。

 お金も必要だけれど生活を支える基盤ではない。我が家の日常を支えてくれているのは、実りを与えてくれる大地であり、山から湧き出る水であり、この谷を照らし包んでくれる空だ。

 

 第9回新潟出版文化賞 選考委員特別賞受賞

 

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